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太陽光発電投資は本当に節税になる?売電収入の所得区分と予定納税の注意点を税理士が解説

太陽光発電への投資は「節税になる」と紹介されることがあります。
しかし、その効果は売電収入が税金の計算上どの区分(所得区分)で扱われるかによって大きく変わり、期待どおりの節税にならないこともあります。
また、投資や副業で所得が増えた会社員には、翌年、所得税の一部を前払いする「予定納税」という制度の通知が届くことがあります。
この記事では、太陽光発電投資で節税できるとされる仕組みとその条件、
予定納税の1年間のスケジュール(納税カレンダー)と減額申請の手続きを、国税庁の情報をもとに解説します。
この記事で分かること
- 会社員(給与所得者)が太陽光発電の電気を売って得る収入は、事業として行っている場合を除き、原則として雑所得に区分されます
- 雑所得の赤字は給与所得と相殺(損益通算)できないため、「赤字の分だけ給与の税金が戻る」という説明がそのまま当てはまらない場合があります
- 太陽光発電設備の減価償却は耐用年数17年・個人は原則定額法で計算します。設備1,000万円なら年間約59万円が目安ですが、これは1年を通じて業務用に使った場合の概算で、使用を始めた月や売電の割合によって変わります
- 前年分の税額をもとにした「予定納税基準額」が15万円以上になると、7月と11月の2回、所得税の前払い(予定納税)が必要になります。雑所得は基準額の計算から原則除かれます
- その年の所得が減る見込みなら、7月1日〜15日または11月1日〜15日の減額申請で、予定納税額を見直せる場合があります
太陽光発電投資とは?売電収入と設備費の関係を先に確認
太陽光発電投資とは、太陽光パネルなどの発電設備を設置・取得し、
発電した電気を自宅などで使ったり(自家消費)、電力会社に売ったり(売電)しながら、
設備の購入費や維持費を回収していく運用のことです。
収入の柱は売電収入で、支出には設備の取得費のほか、保守点検などの維持費があります。
まずこの収入と支出のバランスが投資としての土台であり、税金の取り扱いはその上に乗る要素にすぎません。
ひとくちに売電といっても、自宅で使って余った電気だけを売る「余剰売電」と、
発電した電気をすべて売る「全量売電」があり、
どちらの形かによって税金の計算の前提(所得の区分や経費にできる範囲)が変わります。
この記事は太陽光発電投資をおすすめするものではなく、
「節税になる」という説明が成り立つ条件と限界を、購入前に確認できるように整理するものです。
また、この記事の後半では、所得税の一部を前払いする「予定納税」の制度も扱います。
先に関係を整理しておくと、会社員の売電収入の多くが該当する雑所得(詳しくは次の章で説明します)は、
予定納税の基準となる金額の計算から原則として除かれるため、
売電収入だけを理由に予定納税の対象になるわけではありません。
予定納税の章は、売電を事業として申告している場合や、不動産収入などほかの継続的な所得がある会社員を主に想定して、
通知が届いてからの1年間の流れを確認します。

太陽光発電投資はなぜ「節税になる」と言われるのか?
太陽光発電投資は、発電した電気を電力会社に売る「売電収入」を得ながら、
設備の取得費用を「減価償却費」として複数年に分けて経費計上できる投資として紹介されます。
減価償却とは、高額な設備の購入費を、使える年数(耐用年数)に割り振って毎年少しずつ経費にしていく仕組みです。
売電収入より経費が大きい年は計算上赤字になるため、
「その赤字を給与所得と相殺(損益通算)して税金を減らせる」と説明されることがあります。
ただし、この説明が成り立つかどうかは、売電収入がどの所得区分になるかで決まります。
ここを確認しないまま設備を購入すると、想定していた節税効果が得られないことがあります。
会社員の売電収入は原則「雑所得」——損益通算できるかの分かれ目
国税庁の質疑応答事例では、給与所得者が自宅に設置した太陽光発電設備の余った電気を売却している場合の収入は、
雑所得(他のどの所得にも当てはまらない所得)に該当するとされています。
一定規模以上の設備で発電した電気を全量売電している場合も、事業として行われている場合を除き、同様に雑所得と考えられるとされています(国税庁 質疑応答事例「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」)。
ここが節税効果の分かれ目です。
損益通算(赤字を他の所得から差し引く仕組み)の対象は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られており、
雑所得の計算上生じた赤字は、給与所得など他の所得から差し引くことができません(国税庁 タックスアンサー No.2250「損益通算」)。
つまり、売電収入が雑所得に区分される場合、「赤字で給与の税金が戻る」という形の節税は成り立ちません。
一方、発電を営利性・継続性のある事業として行っていると認められる場合には、
事業所得に該当すると考えられます。
事業所得であれば損益通算の対象になり、複式簿記での記帳やe-Tax申告などの要件を満たせば、
青色申告特別控除(最大65万円)といった制度も使えます。
ただし、事業に当たるかどうかは設備の規模や管理の実態などによる個別判断であり、「投資すれば自動的に事業所得になる」わけではありません。
| 売電のかたち | 所得区分の考え方 | 赤字の損益通算 |
|---|---|---|
| 自宅の余剰電力を売却 (会社員) | 原則として 雑所得 | できない |
| 全量売電 (事業として行っていない場合) | 原則として 雑所得 | できない |
| 事業として 行っている場合 | 事業所得に該当し得る (規模・実態による 個別判断) | 対象になり得る |
売電の赤字で給与の税金を取り戻すことはできないため、手取りを増やしたい会社員は、iDeCoや各種控除で給与の税負担を下げる方法もあわせて検討する価値があります。
減価償却はいくらになる?——耐用年数17年・個人は原則定額法
太陽光発電設備は、太陽電池モジュールやパワーコンディショナー(発電した電気を家庭や送電網で使える形に変換する装置)などが一体となった自家発電設備として
「機械及び装置」に分類され、耐用年数は17年とされています。
また、個人の場合、税務署に届出をしなければ、減価償却の方法は定額法(毎年同じ額を経費にする方法)になります。
仮の数字で、年間の減価償却費のイメージを計算してみます。
- 設備の取得価額:1,000万円(仮定値)
- 耐用年数17年の定額法償却率:0.059
- 年間の減価償却費:1,000万円 × 0.059 = 約59万円
この約59万円は、設備を1年を通じて業務用に使った場合の概算です。
実際の減価償却費は、設備を使い始めた月や、次に説明する売電の割合によって変わります。
自宅で使う電気の余りを売っている場合は、この約59万円がすべて経費になるのではなく、
発電量のうち売電した電力量の割合(業務用割合)を掛けた金額だけが必要経費になります。
ご自身の設備金額と売電の割合をこの式に当てはめて、「経費にできる額」と「売電収入」のバランスを確認することが、投資判断の出発点になります。

投資する前に確認したいリスクは?
太陽光発電投資には、税金の話の前に確認しておきたいリスクがあります。
「費用がかかる」「制度が変わる」と一般論で知っているだけでは判断材料にならないため、
購入前に「何を、どの資料・契約で確かめるか」の形で整理します。
| 確認したいこと | 見る資料・契約 | 収支への影響 |
|---|---|---|
| 設備費・工事費と 借入の条件 |
| 初期費用・維持費・返済額が 大きいほど、 売電収入で回収し終えるまでの 前提が厳しくなります |
| 売電単価と 売電期間 | FIT/FIP制度の認定内容、 電力会社との売電契約 | 適用される単価と期間が 収入計画の前提になります。 期間終了後は 売電の条件が変わります |
| 出力制御の条件 | 送配電事業者との接続契約、 送配電事業者からの案内 | 出力制御の対象になると、 発電しても 売電できない時間帯が 生じ得ます |
| 税務上の前提 | 売電の所得区分の見通し、 減価償却費の計算 (設備金額×償却率×売電割合) | 所得区分によって、 赤字を給与と相殺できるかどうかなど、 節税効果の前提そのものが 変わります |
表の中のFIT(固定価格買取制度)とは、国が定めた価格で電力会社が一定期間電気を買い取る制度です。
FIP制度とは、売電の対価が市場価格に連動し、そこに補助額が上乗せされる制度で、FITからの移行が進められています。
買取価格や期間は、設備の区分・認定を受けた年度・設置形態ごとに定められ、年度ごとに見直されています。
「住宅用なら何年・いくら」と固定的に考えず、ご自身の認定内容と契約の記載を確認してください(資源エネルギー庁「買取価格・期間等」)。
出力制御とは、電気が需要を上回って余るおそれがある場合などに、発電設備からの買取が一時的に制限される仕組みです。
対象になる設備の範囲や条件は、接続契約と送配電事業者の案内で確認できます(資源エネルギー庁「出力制御について」)。
節税は投資の収支を補助的に調整する要素にすぎません。
表の各項目を実際の資料で確かめないまま、「節税でこれだけ戻る」という見込みだけを根拠に収支の判断をしないことが、購入前の最も重要な確認ポイントです。
太陽光投資で所得が増えると「予定納税」の対象になる?
予定納税とは、前年分の所得金額や税額をもとに計算した「予定納税基準額」が15万円以上になる人が、
その年の所得税の一部をあらかじめ納付する制度です(国税庁 タックスアンサー No.2040「予定納税」)。
対象になると、税務署から原則としてその年の6月15日までに通知書が届き、7月と11月の2回、基準額の3分の1ずつを納付します。
ここで押さえたいのは、予定納税基準額の計算では、
譲渡所得・一時所得・雑所得などの臨時的・変動的な所得は原則として除かれるという点です。太陽光発電投資との関係では、次のように整理できます。
- 売電収入を雑所得として申告している場合:その所得は基準額の計算から原則除かれるため、売電収入だけを理由に予定納税の対象になることは基本的にありません
- 売電を事業所得として申告している場合や、ほかに不動産所得などの継続的な所得がある場合:これらは基準額の計算に含まれるため、前年の所得の増加によって予定納税の対象になることがあります
売電以外にも副業収入がある方は、副業の受け取り方で変わる税金・住民税の申告ルールもあわせて確認しておきましょう。
「通知が届いた=申告に間違いがあった」ではありません。
予定納税はあくまで税金の前払いであり、納めた額は翌年の確定申告で精算されます。次の納税カレンダーで、1年間の流れを確認しておきましょう。
予定納税の1年間の流れ——納税カレンダー
予定納税の対象になった年の「いつ・何が起きて・何を確認するか」を時系列で整理します。
このカレンダーを押さえておけば、通知が届いても慌てずに対応できます。
通知・第1期の対応
| 時期 | 起きること・やること | 確認する資料・ポイント |
|---|---|---|
| 6月15日まで | 税務署から予定納税額の 通知書が届く (書面またはe-Tax) | 通知書の予定納税基準額と 第1期・第2期の金額。 前年分の確定申告書の控えと 突き合わせる |
| 7月1日〜7月15日 | 【所得が減る見込みの人】 第1期分・第2期分の 減額申請を提出 | その年6月30日の現況で 見積もった 申告納税見積額と、 その計算の基礎となる事実を 記載した書類 |
| 7月1日〜7月31日 | 第1期分を納付 (基準額の3分の1) | 振替納税・e-Tax・ クレジットカードなどの 納付方法と口座残高 |
第2期以降の対応
| 時期 | 起きること・やること | 確認する資料・ポイント |
|---|---|---|
| 11月1日〜11月15日 | 【第2期分だけ 減額したい人】 減額申請を提出 | 10月31日の現況で 見積もり直した 申告納税見積額 |
| 11月1日〜11月30日 | 第2期分を納付 (基準額の3分の1) | 第1期と同様。 減額の承認を受けた場合は 承認後の金額 |
| 翌年2月16日〜 3月15日 | 確定申告で精算 | 申告書の予定納税額の欄に 納付済みの額を記入。 納めすぎていれば還付、 不足分は納付 |
| 納付が遅れたとき | 納期限の翌日から 延滞税がかかる | 延滞税の割合は 年により変動するため、 国税庁サイトで 最新の割合を確認 |
納期限が土日祝日に当たる場合はその翌日が期限になります。
また、災害等により期限が延長される場合など例外もあるため、通知書の記載と国税庁の案内をあわせて確認してください。

所得が減りそうな年は「減額申請」で見直せる
廃業・休業・失業をした場合、
業況不振などで本年分の所得が前年分より明らかに少なくなると見込まれる場合、
災害・盗難などで損害を受けた場合、
医療費控除や扶養控除などの控除が前年より増える場合などには、
予定納税額の減額申請ができます(国税庁「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」)。
「今年は収入が減りそう」という感覚だけで出す手続きではなく、通知された金額と当年の見積額を比較する手続きです。次の4つのステップで進めます。
減額申請の4ステップ
- 税務署から届いた予定納税の通知書と、前年分の確定申告書の控えを確認する(通知書の予定納税基準額と、第1期・第2期の金額を把握します)
- その年の申告納税見積額(今年1年分の所得と税額の見積もり)を計算する。7月に申請する場合はその年6月30日の現況で、11月に申請する場合はその年10月31日の現況で見積もります
- 見積額が通知書の予定納税基準額より低くなる見込みかを比較する。低くなる見込みであれば、見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類を添えて、期限内(第1期分・第2期分は7月1日〜15日、第2期分のみは11月1日〜15日)に、e-Taxまたは書面で所轄の税務署へ提出します
- 税務署の審査結果(承認等通知書)に記載された金額を確認し、その金額を納期限までに納付する。納付した予定納税額は、翌年の確定申告で精算します
納付する金額は、自分の見込みで決めるのではなく、
税務署からの通知書、または減額申請の承認を受けた場合は承認等通知書に記載された金額を確認してください。
納期限までに納付されない額があると、納期限の翌日から延滞税がかかることがあります。
また、減額が認められるかどうかは税務署の審査によるため、申請すれば必ず減額されるわけではない点にもご注意ください。
よくある質問
Q. 太陽光発電の売電収入が赤字なら、給与の税金は安くなりますか?
売電収入が雑所得に区分される場合、赤字を給与所得と損益通算することはできません。
事業所得に該当する場合は損益通算の対象になり得ますが、事業に当たるかは設備の規模や管理の実態による個別判断です。
購入前に、ご自身のケースの所得区分の見通しを確認することをおすすめします。
Q. 予定納税の通知が届きました。放置するとどうなりますか?
納期限(第1期は7月31日、第2期は11月30日)を過ぎると、期限の翌日から納付の日まで延滞税がかかります。
その年の所得が減る見込みがある場合も放置はせず、
期限内の納付か、期限内(7月1日〜15日または11月1日〜15日)の減額申請のどちらかを選んでください。
Q. 売電収入があると、必ず予定納税の対象になりますか?
なるとは限りません。予定納税の対象は、予定納税基準額(原則として前年分の申告納税額)が15万円以上の場合です。
また、雑所得として申告した売電収入は基準額の計算から原則除かれます。事業所得や不動産所得として申告している場合は基準額に含まれるため、対象になることがあります。
Q. 予定納税額の減額申請は、今年の収入が減りそうなら誰でもできますか?
「減りそう」という見込みだけでは申請できません。
7月の申請ならその年6月30日、11月の申請ならその年10月31日の現況で計算した申告納税見積額が、通知書の予定納税基準額より低くなる見込みであることが前提です。
そのうえで、見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類を添えて、期限内(7月1日〜15日または11月1日〜15日)に提出する必要があります。減額が認められるかどうかは税務署の審査によります。
Q. 予定納税で納めた税金は戻ってきますか?
翌年の確定申告で精算され、確定した年間の税額より予定納税額が多ければ、差額は還付されます。
確定申告書の予定納税額の欄に記入漏れがあると正しく精算されないため、通知書と納付の記録は確定申告まで保管しておいてください。
まとめ
太陽光発電投資の節税効果は、売電収入が事業所得か雑所得かで大きく変わります。
会社員の売電収入は原則雑所得で、赤字でも給与と損益通算できないため、
「節税になる」という説明をそのまま受け取らず、所得区分の見通し・減価償却費・売電収入のバランスを購入前に確認することが先決です。
予定納税は税金の前払いの制度であり、通知が届いても、納税カレンダーに沿って期限内の納付または減額申請を行えば心配はいりません。
判断に迷う場合は、資料がそろっている段階で専門家に確認すると、選べる対応の幅が広がります。
トランス税理士法人では、サラリーマン・会社員の確定申告や税務相談をサポートしています。
太陽光発電投資の確定申告や予定納税の通知に不安がある方は、設備の契約書・売電収入の明細・予定納税の通知書を整理したうえでお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

- トランス税理士法人 代表税理士
- 1978年生まれ。
東京税理士会所属(登録番号 第140269号)。
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科修了、MBA取得。
税理士・CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士として、法人税務から個人税務まで幅広い相談に対応。特に、サラリーマン・会社員の確定申告、税務調査対応、RSU・ストックオプション、不動産所得、副業、各種控除など、給与所得者に起こりやすい税務の論点を中心にサポートしている。
また、税務調査をテーマにした書籍
『〜知らないと損するかもしれない〜 税務調査を受ける前に押さえるべきポイント』
(株式会社KACHIEL)に、共著者の一人として執筆に参加。
コラムでは、複雑になりやすい税金の仕組みをできるだけ分かりやすく整理し、
読者が自分の状況を確認しやすい情報発信を行っている。
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