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実家相続・空き家売却時の譲渡所得税対策|3,000万円控除と取得費を解説

確定申告ガイド 監修・執筆:中山慎吾(トランス税理士法人 代表税理士)
「実家相続・空き家売却時の譲渡所得税対策」実家の鍵と書類を手にした会社員のイラスト

親から相続した実家を売るときは、売却代金だけを見ても税額は分かりません
取得時の資料、相続後の使い方、解体や売却の時期によって、差し引ける費用や使える特例が変わります。
この記事では、契約や解体の前に確認したいポイントを事例とともに整理します。

本記事は、2026年7月時点の法令、国税庁の案内および令和8年度税制改正の内容に基づいています。

この記事で分かること

  • 空き家の売却税額は「売却価額-取得費-譲渡費用-特別控除」を基礎に計算するため、売却代金の全額に税率がかかるわけではありません
  • 相続空き家の特別控除は、2026年7月時点では令和9年12月31日までの一定の譲渡が対象で、最高3,000万円です。建築時期、相続後の利用、個人ごとの売却期限、売却価額など複数の要件をすべて確認する必要があります。
  • 取得費が分からない場合は売却価額の5%を概算取得費にできますが、利益が大きく計算されやすいため、親が取得した当時の契約書や領収書を先に探します
  • 解体してから売る方が有利とは限りません。査定額、解体費、特例の要件と期限を並べ、売買契約前に比較することが重要です

実家を売る前に確認する6つの項目

最初に確認したいのは、売却予定額だけではありません
相続開始日、家の建築時期、親が取得した時期と金額、相続後に誰かが住んだり貸したりしたか、
解体予定日、売買契約日を一つの時系列にします。

相続・取得の基本資料

確認項目見る資料確認する理由
相続開始日と相続人
  • 戸籍
  • 遺産分割協議書
  • 相続関係書類
空き家特例の売却期限や
控除上限の判定
関わるため
建築時期と建物の種類登記事項証明書、
固定資産税関係資料
昭和56年5月31日以前の建築か、
区分所有建物でないか
確認するため
親の取得時期と取得価額
  • 売買契約書
  • 建築請負契約書
  • 領収書
取得費と所有期間
確認するため

利用・売却・相続税の資料

確認項目見る資料確認する理由
相続後の利用状況
  • 賃貸借契約
  • 公共料金
  • 住民票など
事業、賃貸、居住に
使っていないか
確認するため
売却・解体の条件
  • 査定書
  • 解体見積書
  • 売買契約案
手取りと特例要件を
契約前に比較するため
相続税の申告内容相続税申告書と
納付資料
相続税の一部を取得費に
加算できる可能性
確認するため

売却を急いで資料確認を後回しにすると、契約後では変更できない条件が見つかることがあります。
とくに解体、賃貸、売買契約は、特例判定と合わせて順序を決めます

相続した実家を売るか解体するか期限を確認しながら考える場面を表現する画像

空き家売却時の譲渡所得の計算方法

譲渡所得とは、土地や建物を売って生じた利益です。
基本の計算は「売却価額-取得費-譲渡費用-特別控除」です。
土地・建物の譲渡所得は給与所得などと分けて税額を計算します。
詳しい計算方法は、国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」でも確認できます。

取得費が分からない場合の概算取得費

相続した不動産の取得費は、原則として親が購入・建築したときの金額を引き継ぎます
建物は、その取得価額から所有期間に応じた減価償却費相当額を差し引きます。

古い不動産で実際の取得費が分からない場合、国税庁は売却価額の5%相当額を概算取得費にできると案内しています。
たとえば売却価額が2,000万円なら、概算取得費は100万円です。
差し引ける取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなる可能性があるため、
安易に5%で計算する前に取得時の契約書、通帳、領収書などを探します。
詳しくは国税庁「取得費が分からないとき」をご確認ください。

なお、賃貸に出している投資用物件を売る場合は、減価償却と売却時の税金のシーソー関係など、相続とはまた別の注意点があります。

相続時の所有期間と長期・短期の判定

相続した土地・建物の取得時期は、原則として親の取得時期を引き継ぎます
そのため「相続から2年で売ったから短期」とは限りません。
売却年の1月1日時点で、親の取得日から数えた所有期間が5年を超えるかを確認します。
2026年7月時点の一般税率では、長期譲渡所得の所得税率は15%、短期譲渡所得は30%で、
これに復興特別所得税と住民税が加わります。
ほかの特例税率が適用される場合もあるため、実際の税率は個別に確認します。

ここまでの計算で求めた譲渡所得から、要件を満たす場合に差し引けるのが特別控除です。
相続した実家では、次の3,000万円特別控除を使えるかどうかが税額に大きく関わります。

相続空き家の3,000万円特別控除

一定の条件を満たす相続空き家を売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける制度です。
制度全体では令和9年12月31日までの譲渡が対象です。
さらに、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという
個人ごとの期限も満たす必要があります。
令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合、
1人あたりの上限は2,000万円です。

主な確認項目は次のとおりです。
これは要件の一部であり、該当しそうな場合も申告前に全要件と必要書類を確認します

  • 原則として、昭和56年5月31日以前に建築された家屋である
  • 区分所有建物として登記された建物ではない
  • 相続開始直前に、原則として亡くなった親以外の人が住んでいない
  • 相続時から売却時まで、事業、賃貸、居住に使っていない
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売却代金が一定の合算判定を含め1億円以下である

令和6年1月1日以後の譲渡では、売却後、翌年2月15日までに
買主側で耐震改修または取壊しを行う形も一定の対象になりました。
誰がいつ解体するかで必要な確認が変わるため、契約書へ条件を入れる前に整理が必要です。
制度の全体像は国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご参照ください。

相続税を取得費に加算できる特例

相続税を納めた人が、相続した土地や建物を
相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合、
相続税額のうち所定の方法で計算した金額を譲渡所得の取得費へ加算できることがあります。
これが相続財産を譲渡した場合の取得費の特例です。

相続税を払っていれば自動的に全額を加算できる制度ではありません
相続税申告書、売却した財産の評価額、相続開始日と売却日を照合します。
また、空き家の3,000万円特別控除との適用関係も確認が必要です。
詳しい期限と計算は国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」で確認できます。

建物付きと解体後では、どちらの売却が有利ですか?

税金だけで一律に決めることはできません
建物付きの査定額、更地の査定額、解体費、解体時期、特例を使える可能性を同じ表に並べ、
最終的な手取りを比較します

売却を検討する築年数の古い日本の戸建て住宅を表現する画像

売却のための解体費と譲渡費用

譲渡費用は、土地や建物を売るために直接かかった費用です。
仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、土地を売るための建物取壊し費用などが
該当する例として挙げられています。
一方、通常の修繕費や固定資産税など、維持・管理のための費用は原則として譲渡費用になりません。
解体費は売却との直接の関係が分かるよう、見積書、契約書、請求書、領収書を保存します

比較する内容建物付きで売る場合解体後に売る場合
売却価額建物の状態を反映した
査定額
更地としての査定額
追加費用残置物処分や
補修条件を確認
解体費、測量費など
確認
特例要件耐震基準や
売却後の取壊し条件を確認
解体日、売買契約日、
売却期限を確認
税務資料建築時期、利用状況、
契約条件
左記に加え
解体契約書・領収書

建物付きで売る場合と解体後に売る場合のそれぞれについて、査定額から費用と概算税額を差し引き、期限内に実行できるかどうかも含めて比較します。
更地の査定額が高くても差額が解体費を下回る場合がある一方、解体費を負担しても売却条件と特例の両面で有利になる場合があります。
査定額だけ、または税額だけで決めないことがポイントです。

実家・未利用地の売却相談事例

解体費約300万円と3,000万円控除を比較した事例

2022年7月頃、静岡県の実家を相続し、約300万円の解体見積りを受けた方からご相談いただきました。
確認したところ、相続空き家の特別控除を使える可能性があり、
解体費を含む売却条件と特例適用後の税額を比較しました。

この事例では、解体後の土地を約5,000万円で売却し、税法上の利益は約3,300万円でした。
3,000万円控除後の利益を約300万円として申告し、納税額は約61万円でした。
特例を使わない場合の概算税額は約670万円で、差は約609万円です。
(この数値は旧記事の記載による概算値で、取得費や申告書の内訳を本記事で再計算したものではありません。)

取得費不明でも売却期限を先に確認した事例

2023年6月頃、厚木市の実家を相続から約2年保有していた方からご相談いただきました。
親の建設費と土地購入費が分からない一方、空き家特例の期限内であることを確認できたため、
期限と売却査定を優先して検討しました

更地にして約2,000万円で売却し、税法上の利益は約1,900万円でした。
特例を使わなければ約385万円の税額が見込まれたのに対し、
3,000万円控除により譲渡所得に対する税額は0円になりました。
取得費が不明だからと売却を止めるのではなく、特例期限と取得資料の捜索を並行した点が判断のポイントです。
(この数値は旧記事の記載による概算値です。)

約400万円の未利用地で別の特例を検討した事例

2023年1月頃、茨城県にある相続後未利用の土地について、約400万円で購入したいとの話を受けた方からご相談いただきました。
この土地は建物のある相続空き家ではなく、自治体への確認を経て、
低未利用土地等の100万円特別控除を検討しました。

特例を使わない場合の概算税額約77万円に対し、適用後は約57万円となり、差は約20万円でした。
(この数値は旧記事の記載による概算値です。)
低未利用土地等の100万円特別控除は、令和8年度税制改正により適用期限が3年延長され、
2026年7月時点では令和10年12月31日までの一定の譲渡が対象です。
都市計画区域、所有期間、譲渡価額、売却後の利用、市区町村の確認書などの要件は、
国土交通省「土地の譲渡に係る税制」で確認できます。

空き家を解体した後の明るい住宅地の更地を表現する画像

空き家売却後の確定申告で準備する資料

売却した翌年の確定申告に向け、少なくとも次の資料を整理します
特例を使う場合は、自治体が発行する確認書など追加資料が必要です。

  • 売買契約書、決済明細、仲介手数料の請求書・領収書
  • 親が購入・建築したときの契約書、領収書、代金の支払いが分かる資料
  • 解体・測量を行った場合の見積書、契約書、請求書、領収書
  • 登記事項証明書、戸籍など相続と建物の情報が分かる資料
  • 相続税申告書と納付資料
  • 空き家特例を使う場合の被相続人居住用家屋等確認書など所定の添付書類

資料は「取得時」「相続時」「保有中」「売却時」に分けると、
取得費、所有期間、利用状況、譲渡費用を照合しやすくなります。

よくある質問

Q. 相続した実家を売って利益が出なければ確定申告は不要ですか?

A. 取得費と譲渡費用を正しく計算した結果、譲渡所得が生じない場合があります。
ただし、3,000万円特別控除などの特例を使って利益が0円になる場合は、特例適用のため確定申告が必要です。
売却代金と概算取得費だけで判断せず、資料をそろえて計算します。

Q. 親が老人ホームに入ってから亡くなった場合も空き家特例を使えますか?

A. 要介護認定等を受けて老人ホーム等へ入所していた場合も、
入所前の居住状況や入所後の家屋の利用など一定の要件を満たせば対象になる可能性があります。
介護認定の資料、施設の契約書、公共料金、相続後の利用状況を確認します。

Q. 空き家を一度貸してから売っても3,000万円控除を使えますか?

A. 相続開始から売却まで事業、貸付け、居住に使われていないことが要件に含まれます。
賃貸に出す前に、賃料収入と特例を使えなくなる場合の税額を比較してください。
短期間や無償の利用でも、事実関係の確認が必要です。

Q. 兄弟3人で相続した場合も1人3,000万円まで控除できますか?

A. 令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と敷地を取得した相続人が3人以上の場合、
控除上限は1人あたり2,000万円です。
単に法定相続人が3人いるかではなく、対象財産を相続・遺贈で取得した人数などを確認します。

まとめ

相続した実家の売却税額は、売却価額、親の取得費、売却に直接かかった費用、所有期間、
利用できる特例を順に確認して計算します。
空き家の3,000万円特別控除には売却期限や利用状況などの要件があるため、
いったん貸す、解体する、売買契約を結ぶ前に確認することが大切です。

相続開始日と売却予定日を時系列にし、登記事項証明書、親の取得時資料、相続税申告書、
査定書、解体見積書を並べると、検討すべき特例と不足資料が見えやすくなります

トランス税理士法人では、サラリーマン・会社員の確定申告や税務相談をサポートしています。
相続した実家・空き家の売却税額や特例の適用に不安がある方は、相続関係資料、取得時の契約書、相続税申告書、査定書・解体見積書を整理したうえでお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

中山慎吾
中山慎吾トランス税理士法人 代表税理士
1978年生まれ。
東京税理士会所属(登録番号 第140269号)。
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科修了、MBA取得。

税理士・CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士として、法人税務から個人税務まで幅広い相談に対応。特に、サラリーマン・会社員の確定申告、税務調査対応、RSU・ストックオプション、不動産所得、副業、各種控除など、給与所得者に起こりやすい税務の論点を中心にサポートしている。

また、税務調査をテーマにした書籍
『〜知らないと損するかもしれない〜 税務調査を受ける前に押さえるべきポイント』
(株式会社KACHIEL)に、共著者の一人として執筆に参加。

コラムでは、複雑になりやすい税金の仕組みをできるだけ分かりやすく整理し、
読者が自分の状況を確認しやすい情報発信を行っている。