Column
外資系RSU・ストックオプションの確定申告|権利確定・売却時の確認ポイント

外資系企業や上場企業に勤務している会社員の方は、
給与や賞与とは別に、会社の株式や株式を買う権利を受け取る株式報酬制度に関わることがあります。
代表的なものが、RSU、ストックオプション、ESPPです。
RSU(Restricted Stock Unit)は、
一定の勤務期間や条件を満たしたときに会社の株式を受け取れる株式報酬です。
ストックオプションは、あらかじめ決められた価格で会社の株式を買う権利です。
ESPP(Employee Stock Purchase Plan)は、
給与天引きなどを通じて会社の株式を割引価格で購入できる制度を指すことがあります。
いずれも「会社から株に関する報酬を受け取る制度」です。
しかし税務上は、付与された時点、権利が確定した時点、権利を行使した時点、株式を購入した時点、株式を売却した時点で見るポイントが変わります。
株式報酬の確定申告で大切なのは、制度名だけで判断せず、
いつ、何株を、いくらの価値で取得し、いつ売却したのかを分けて整理することです。
権利確定時、権利行使時、購入時、売却時、為替換算、海外証券口座の明細が絡むため、
通常の給与だけの会社員よりも確認する資料が多くなります。
この記事で分かること
- RSU、ストックオプション、ESPPは、どの時点で所得や損益を確認するかが重要です
- RSUは、権利確定時に生じる経済的利益と、売却時の株式譲渡損益を分けて整理します
- ストックオプションは、税制適格か税制非適格か、いつ権利行使したかによって確認する内容が変わります
- 海外証券口座を使う場合は、権利確定日、売却日、株数、時価、為替レート、手数料を後から説明できる状態にしておく必要があります
- 勤務先の制度資料や証券会社の取引明細をそろえてから相談すると、申告範囲や不足資料を確認しやすくなります
RSU・ストックオプションで確定申告が必要になるのはどんなときか
給与だけで年末調整が完了している会社員であれば、通常は確定申告をしない年もあります。
しかし、給与以外の所得がある場合、給与収入が一定額を超える場合、
源泉徴収されていない給与等を受け取っている場合などは、確定申告が必要になることがあります。
給与所得者で確定申告が必要になるケースは、
国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」でも整理されています。
RSUやストックオプションの記事では、
この一般論を株式報酬の資料に引き寄せて確認することが大切です。
RSUやストックオプションは、勤務先から受け取る報酬であっても、
通常の給与明細や年末調整だけでは整理しきれないことがあります。
特に、海外親会社の株式を海外証券口座で管理している場合、
権利確定や売却の情報が日本の源泉徴収票に十分反映されていないケースがあります。
最終的な申告要否は、
給与収入、給与以外の所得、源泉徴収の有無、口座区分、勤務先資料での処理状況によって変わります。
この表だけで申告要否を断定せず、まずはどの資料を確認すべきかを整理してください。
勤務先・給与まわりの確認
| 確認すること | 確定申告の必要性を考える理由 | まず見る資料 |
|---|---|---|
| 株式報酬が源泉徴収票や 給与明細に反映されているか | 勤務先側で給与として処理されているか、 年末調整・源泉徴収の対象に 入っているかで、 申告時に確認する内容が変わるため |
|
| 給与収入が2,000万円を超えるか | 給与収入が2,000万円を超える 給与所得者は、 確定申告が必要になるため |
|
| 源泉徴収義務のない者から 給与等を受け取っているか | 国税庁の案内では、 源泉徴収義務のない者から 給与等を受け取っている人も 確定申告が必要な人に含まれているため |
|
口座・取引まわりの確認
| 確認すること | 確定申告の必要性を考える理由 | まず見る資料 |
|---|---|---|
| 海外親会社や海外証券口座で 管理されている株式報酬か | 日本の給与明細や源泉徴収票だけでは、 権利確定・売却・手数料・為替の情報が 足りないことがあるため |
|
| その年に権利確定、権利行使、 購入、売却があったか | RSU、ストックオプション、ESPPでは、 付与された年ではなく、 権利確定・権利行使・購入・売却の タイミングで確認が必要になる ことがあるため |
|
| 売却益や給与以外の所得が 20万円を超える可能性があるか | 給与所得者でも、 給与所得・退職所得以外の所得金額の 合計額が20万円を超える場合などは 確定申告が必要になることがあるため |
|
| 国内の特定口座だけで 売却が完結しているか | 国内証券会社の特定口座で 源泉徴収ありの場合と、 海外証券口座や一般口座での売却では、 申告時に確認する内容が変わるため |
|
「会社員だから確定申告は不要」と考えるのではなく、
勤務先から配布された株式報酬の資料、証券会社の年間取引明細、
権利確定日や売却日の記録を確認し、日本で申告すべき所得があるかを整理することが必要です。
RSU・ストックオプション・ESPPはタイミングと資料で整理する
ここで確認したいのは、用語の違いそのものではなく、確定申告で見るタイミングと資料の違いです。
RSU、ストックオプション、ESPP。
同じ「株式報酬」でも、権利確定、権利行使、購入、売却のどこを確認するかが変わります。
| 制度 | 主な確認タイミング | 確定申告で見るポイント | 集めたい資料 |
|---|---|---|---|
| RSU |
| 権利確定時に生じる経済的利益 (所得区分は勤務先資料で確認)と、 売却時の譲渡損益を分けて確認する |
|
| ストックオプション |
| 税制適格・非適格の違い、 権利行使時の経済的利益、 売却時の譲渡損益を確認する |
|
| ESPP |
| 割引購入による経済的利益が 生じうるか、売却時の損益を どう整理するかを確認する |
|
同じ勤務先でも、RSUとESPPが併用されていることがあります。
また、過去に権利確定した株式を翌年以降に売却することもあるため、
1年分の資料だけを見ても全体像が分からない場合があります。
最近の株式報酬で特に詰まりやすいポイント
近年は、外資系企業だけでなく、上場企業やスタートアップでも株式を使った報酬制度に触れる会社員が増えています。
税務上は、制度名を知っているかどうかより、
勤務先資料・海外証券口座・源泉徴収票・売却明細のどこに数字が出ているかを突き合わせることが重要です。

特にストックオプションについては、
国税庁が2023年5月30日に「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表しました。
令和5年度税制改正で税制適格ストックオプションの要件緩和に関する改正が行われたことを踏まえた整理を示しています。
この通り、ストックオプションは「昔からある制度」ではありますが、
現在も制度改正や実務整理が続いている分野です。
一方で、RSUやESPPは、ストックオプションとは別の制度です。
国税庁のストックオプションQ&Aやタックスアンサーを読んだからといって、
RSUやESPPの所得区分・課税タイミングまで一律に判断できるわけではありません。
ここを混同すると、
・勤務先資料では給与に反映されているのか
・海外証券口座側だけに記録されているのか
・売却時だけを見れば足りるのか
が分からなくなります。
ストックオプションの取り扱い
| 最近詰まりやすい点 | なぜ問題になるか | 確認したい資料 |
|---|---|---|
| 税制適格ストックオプションと 税制非適格ストックオプションの 混同 | 税制適格では権利行使時の経済的利益について 課税が繰り延べられますが、 非適格では権利行使時と売却時で 課税関係を分けて確認します |
|
| 税制適格SOで取得した株式を 通常の特定口座・NISAと同じ感覚で扱う | 国税庁No.1540では、特定株式について 特定口座制度やNISA制度を利用できない旨が 示されています |
|
RSU・ESPP・海外明細の取り扱い
| 最近詰まりやすい点 | なぜ問題になるか | 確認したい資料 |
|---|---|---|
| RSUをストックオプションの説明で処理してしまう | RSUは権利を行使して株式を買う制度ではないため、 ストックオプションの課税関係を そのまま当てはめると整理を誤る可能性があります |
|
| ESPPの割引購入を 単なる自社株購入として見てしまう | 給与天引き、割引購入、売却損益が絡むため、 購入時点の経済的利益と売却時の損益を 分けて確認する必要があります |
|
| 英語明細のイベント名だけで判断する | Vest、Release、Exercise、Purchase、Sellは 税務上の所得区分そのものではなく、 申告では日本円換算・源泉徴収票への反映・ 取得費整理が必要になるため |
|
このように、株式報酬の申告では、
どのイベントで、どの数字が発生し、その数字がどこに反映されるのかを追う必要があります。
RSU、ストックオプション、ESPPはそれぞれ違う処理になるというわけです。
RSUは権利確定時と売却時を分けて見る
RSUは、一定期間の勤務継続などの条件を満たすと、株式を受け取る権利が確定する制度です。
確定申告では、まず権利確定時にどれだけの経済的利益を受けたかを確認します。
権利確定時に確認するのは「その日の円換算額」
たとえば
・権利確定日に100株を受け取り
・その日の株価が1株50ドル
・為替レートが1ドル150円
と仮定すると、権利確定時点の円換算額は次のように整理できます。
100株 × 50ドル × 150円 = 75万円
実際には、勤務先資料、証券会社資料、権利確定日の株価、為替レート、源泉徴収票への反映状況を見て、権利確定時に生じる経済的利益と所得区分を確認します。
売却時に確認するのは「譲渡損益」
その後、同じ100株を1株60ドル、為替レート1ドル155円で売却したと仮定すると、
売却時の円換算額は次のようになります。
100株 × 60ドル × 155円 = 93万円
単純に見ると、売却時の93万円と権利確定時の75万円の差額である18万円が、
売却時の損益を考えるうえでの出発点になります。
ただし、18万円がそのまま必ず譲渡所得になるわけではありません。
実際の譲渡所得の計算では、手数料、取得費、為替換算、過去に同じ銘柄を複数回取得しているかなども確認する必要があります。

株式等を譲渡したときの課税や取得費の考え方は、
国税庁の「株式等を譲渡したときの課税」や「譲渡した株式等の取得費」でも説明されています。
権利確定時点の価値(所得区分は勤務先資料で確認すべき部分)と、
売却時点の譲渡損益は分けて整理し、両者を混同しないことが重要です。
ストックオプションは税制適格・非適格の確認が出発点になる
ストックオプションは、あらかじめ決められた価格で株式を取得できる権利です。
税制適格ストックオプションか、
税制非適格ストックオプションかによって、
権利行使時の課税関係が変わります。
国税庁は、税制非適格ストックオプションについて、雇用契約またはこれに類する関係に基因して権利が与えられた場合、権利行使時の経済的利益は給与所得として課税される旨を示しています。
一方、税制適格ストックオプションでは、
一定の要件を満たすことで権利行使時の課税が繰り延べられる仕組みがあります。
ただし、適格・非適格の判定は、制度資料、付与契約、勤務先からの説明、権利行使条件などを見て確認する必要があります。
名称だけで判断せず、勤務先から配布された資料を確認することが重要です。
外貨建ての資料は日付ごとに整理する
RSUやストックオプションでは、米ドルなど外貨建ての株価や売却代金が使われることがあります。
この場合、日本円で申告するために
どの日付の、どの為替相場を使ったのかを説明できるようにしておく必要があります。
日付ごとに使う株価・為替レートが変わる
権利確定日、権利行使日、売却日が異なれば、使う株価や為替レートも変わります。
複数回に分けて権利確定や売却をしている場合は、
イベントごとに資料を保存しておくと確認しやすくなります。
外貨建取引の円換算については、
国税庁の所得税基本通達で、取引日の電信売買相場の仲値などの考え方が示されています。
また、合理的な方法を継続して使用している場合の扱いも示されているため、
取引ごとに都合よくレートを変えるのではなく、
どの資料・金融機関のレートを使ったのかを説明できる状態にしておくことが重要です。
勤務先からもらう資料
| 確認する資料 | 見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 勤務先の株式報酬資料 |
| RSU、ストックオプション、ESPPを 混同しない |
| 源泉徴収票・給与明細 | 株式報酬が給与に反映されているか | 反映済みか未反映かで 申告時の確認内容が変わる |
証券口座・取引まわりの資料
| 確認する資料 | 見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 海外証券会社の明細 |
| 英語表記のイベント名と 日本語の所得区分を対応させる |
| 為替レートの記録 |
| どの資料・金融機関のレートを 使ったかを説明できるようにする |
| 売却明細 |
| 権利確定時の価値と 売却時の損益を分ける |
複数回取得・一部売却では取得費の整理が重要になる
RSUやESPPでは、同じ銘柄の株式を複数回に分けて取得し、その一部だけを売却することがあります
この場合、売却した株式について、
どの取得分をもとに取得費を整理するのかを確認しなければなりません。

権利確定日や購入日が複数あると、株価、為替レート、手数料がそれぞれ異なります。
国税庁の「譲渡した株式等の取得費」では
同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入し、その一部を譲渡した場合の取得費は
総平均法に準ずる方法によって求めた1単位当たりの価額を基に計算すると示されています。
RSUやESPPでも、同じ銘柄を複数回に分けて取得し、一部だけを売却している場合は
特定の取得分だけを感覚的に選んで計算するのではなく
取得履歴全体を見て取得費を整理する必要があります。
特に、海外証券口座の明細では、
Vest、Release、Exercise、Purchase、Sellなどの表記が混在することがあります。
どのイベントが取得にあたり、どのイベントが売却にあたるのかを時系列で並べ、
源泉徴収票や給与明細への反映状況と照合してから申告内容を整理しましょう。
自分で申告する前に確認したいこと
RSUやストックオプションの申告では、
資料がそろっていても、どの数字をどの欄に反映するかで迷いやすくなります。
特に、外貨建ての株式報酬、海外証券口座、複数年にまたがる権利確定や売却がある場合は、
申告書の作成前に全体を整理しておくことが大切です。
- 勤務先の制度資料で、RSU、ストックオプション、ESPPのどれに該当するか確認する
- その年に権利確定、権利行使、購入、売却があったかを時系列で並べる
- 給与明細や源泉徴収票に株式報酬が反映されているか確認する
- 海外証券口座の明細を、株数、株価、手数料、為替レートごとに整理する
- 過去に権利確定した株式を今年売却していないか確認する
- 納税資金を株式売却で用意する場合、売却時期と税額見込みを早めに確認する
RSUやストックオプションは、
株価や為替の影響を受けるため、思った以上に納税額が大きくなることがあります。
権利確定や売却が複数回ある場合は、申告期限が近づいてから一気に整理するより、
資料が届いた時点で保存しておくほうが安全です。
実際にどこで申告漏れが起きやすいかの実例を知っておくと、確認すべきポイントがより具体的になります。
税理士に相談するタイミング
税理士へ相談するタイミングは、資料がすべてそろった後とは限りません。
勤務先資料、海外証券口座の明細、為替レート、過去の売却履歴が混在していて
どこから整理すればよいか分からない段階でも、確認の順番を決める相談はできます。
株式報酬の申告で読者が抱えやすい不安は、
「そもそも申告が必要なのか」
「どの年分を見ればよいのか」
「売却していない株式にも税金が関係するのか」
「納税資金をどう準備するか」に分かれます。
相談前には、届いている資料と未取得の資料を分けておくと、
申告範囲と不足資料を確認しやすくなります。
よくある質問
Q. RSUを受け取っただけで確定申告が必要ですか?
A. 制度内容や給与への反映状況によって確認が必要です。
RSUは、付与された時点ではなく、権利確定時や売却時に所得を確認することが多いため、
権利確定日、株数、時価、為替レート、源泉徴収票への反映状況を整理してください。
Q. ストックオプションは税制適格か非適格かで何が変わりますか?
A. 課税されるタイミングが変わります。
税制非適格ストックオプションでは、雇用関係等に基因する権利行使時の経済的利益が給与所得として扱われることがあります。
税制適格の場合は一定の要件を満たすことで権利行使時の課税が繰り延べられるため、
勤務先資料で制度区分を確認する必要があります。
Q. 海外証券口座の明細はどこを見ればよいですか?
A. Vest、Exercise、Sellなどのイベント名、日付、株数、株価、手数料、売却代金を確認します。
日本円で申告するためには、どの日付の為替レートを使ったのかも説明できるようにしておく必要があります。
Q. RSUやストックオプションの申告は自分でできますか?
A. 資料が少なく、制度内容も明確であれば自分で整理できる場合もあります。
ただし、複数年にまたがる権利確定や売却、海外証券口座、外貨建て資料、税制適格・非適格の判定が絡む場合は、
申告前に税理士へ相談したほうが確認漏れを減らしやすくなります。
まとめ:株式報酬は「制度名」ではなく「日付と資料」で整理しましょう
RSU、ストックオプション、ESPPは、
会社員にとって魅力的な報酬制度である一方、
確定申告では確認すべき資料が多くなります。
付与、権利確定、権利行使、購入、売却を分け、
株数、株価、為替レート、源泉徴収票への反映状況を整理することが重要です。
トランス税理士法人では、サラリーマン・会社員の確定申告や税務相談をサポートしています。
RSU・ストックオプション・ESPPの確定申告に不安がある方は、勤務先資料と証券会社資料を整理したうえでお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

- トランス税理士法人 代表税理士
- 1978年生まれ。
東京税理士会所属(登録番号 第140269号)。
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科修了、MBA取得。
税理士・CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士として、法人税務から個人税務まで幅広い相談に対応。特に、サラリーマン・会社員の確定申告、税務調査対応、RSU・ストックオプション、不動産所得、副業、各種控除など、給与所得者に起こりやすい税務の論点を中心にサポートしている。
また、税務調査をテーマにした書籍
『〜知らないと損するかもしれない〜 税務調査を受ける前に押さえるべきポイント』
(株式会社KACHIEL)に、共著者の一人として執筆に参加。
コラムでは、複雑になりやすい税金の仕組みをできるだけ分かりやすく整理し、
読者が自分の状況を確認しやすい情報発信を行っている。
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